孤独の発明

主に米作りとか酒造りについて

どうにかこうにか

 田植えが半分終わった。

 やるべき仕事はまだまだたくさんあるが、クソ忙しかった十連休を乗り越えて、ようやく息継ぎができたところ。

 例年、四月から五月にかけては、酒蔵の仕事のために滞っていた農作業を一気に片付けなければならないのでめちゃくちゃ忙しいのだけど、今年はさらに7haある田んぼの農繁期も重なって、嫁さんが身重なのであまりきつい農作業を手伝ってもらうわけにもいかず、そのうえ嫁さんのパート先が十連休の間なんやかんやで人手不足という事もあって「どうしても出なければならない」とかで、農作業が一番忙しい時期にパートにでてしまって、僕がこれまで扱ったことのないハローや田植え機を使わざるを得なかったり、あと、これまでに経験したことのない稲の苗を立てる作業やらざるをえなかったりだとか、GWの連休中に狙ったようにキャベツの収穫時期がやってきたり、農協のクソボケがあからさまに徒長したサニーレタスの苗を「今日持って行かなきゃダメになる」だとかで急に持ってきて植えざるを得なかったり、忙しくて定植が遅れていたトウモロコシの苗を植えたら数年に一度の遅霜で壊滅したり、どうしても手が空かなくて引っ越し元の家の片づけを後回しにしていたら家主がキレて「はよ片付けろ」とか言ってきたり、そのほかにもなんやかんやで大変なことが多く、特に十連休中は死ぬかと思った。

 イレギュラーの仕事はともかく、例年この時期に集中する夏野菜の準備はタイミングが命だから、天候と土の状態を見て「このタイミングでやらなければ」という瞬間がある。特に僕がやっている露地栽培では、一手ミスをするごとに数万単位で売り上げが飛んでいくので、その辺の見極めがシビア。年間売り上げの大半を占める夏野菜の作付けを控えるこの時期は、特に精神的にきつい。

 それに比べると、稲作は比較的天候に左右されずに仕事を進められるのだが、いかんせん規模が規模なので絶対的な仕事量が多すぎてどうにも手が足りなくなる。そのうえ、僕が引き継ぐことになった田んぼの大半は「田面が均平ではなく水が溜まらない」という田んぼとしての機能を有しておらず、そのために稲作におけるすべての作業が困難になって、まだ田植えすら終わっていないのに何度も発狂しそうになっている。あと、今年初めて行った稲の育苗が、うまくいくのか心配で心配で、育苗中は夜寝ている間も「苗立てに失敗して一作潰し、試験栽培に携わってくれてる農技センターの技師や米を引き取ってくれる酒蔵などのすべての関係者に迷惑をかける」という悪夢を繰り返し見せられた。

 精神的にも肉体的にも限界が見えて、潰れる寸前のところでようやく踏みとどまった感じ。

 作業がここまで集中した原因は色々あるのだが、何よりも大きいのはGWの十連休で、これさえなければもっとまともに仕事をこなせていられたはず。

 農業は直接GWが影響する仕事ではないのだけど、様々な面で世間の休みに足を引っ張られて、身動きが取れなくなった。少なくとも僕にとってGWは「世間のやつらが連休をとるために、本来ならやらなくてもよいはずの無駄な労働を無償で強いられる忌々しい期間」であり、特に今年のような十連休を作りやがったマザーファッカーは、地獄で火の山とファックすべきであると、僕は強く主張したい。

 今は農業の経営が野菜から稲作へと転換する過渡期にあり、稲作の経営を立て直すまでに多少の無理はしょうがないと思っているけど、さすがに限度というものがある。来年からは、冬場の働き方も含めて色々考えなきゃならないだろう。