孤独の発明

主に米作りとか酒造りについて

活性にごり

 今年一本目の新酒が上がった。五百万石70%の活性にごり酒

 米が硬いせいか、例年以上に米が解けず、アルコール度数がやや低めの酒になった。

 うちの蔵の場合活性にごり酒は、一旦もろみの一部をモノフレックスポンプに通してすりつぶし、残ったもろみは槽で搾る。モノフレですりつぶしたもろみのさらに半分くらいを、三十五度で火入れし、酵母の活性を殺して吹き出しを予防する。

 最後に火入れしたもろみと生のもろみ、絞った酒とを合わせて、メッシュで濾してから瓶づめをする。

 

 一本目の搾りだったため、槽にかけた直後のあら走りの酒は正直袋香がやばかった。

 香りは立っているが全体的に薄いさみしい味の酒で、ちょっとあれ? と思ったけど、すりつぶしたもろみと合わさると、コクがでていい感じになる。

 袋香も、圧力をかけ始めるとしだいに減ってきて、もろみと混ぜてにごりにするとほほぼ消えた。袋香がある、と知ったうえで飲んでいてもわからないレベルだから、神業クラスの利き酒能力でもない限り、指摘が入ることはないと思う。

 ただ、苦い。飲んだ後口に、強烈な苦味が出てきて驚いた。

 なんでこんなに苦いんだろうと不思議になって、いろいろ考えたが、たぶん、酵母の活性を殺すためにもろみのまま火入れしているのが原因なのではないかな、と思えてきた。

 もろみの後半になりアルコール度数が高くなってくると、酵母が死に始めてくると、菌体内に含まれていたアルギニンが放出され、苦味がでるという話を聞いたことがある。

 搾った後に火入れするなら、酵母がほぼ取り除かれているから大丈夫なのだろうが、もろみの中で酵母が生きている状態で火入れすると、酵母が急激に死滅し(というか死滅させるのが目的なのだからこれは当然)、苦味物質が大量に出て苦くなってしまったのではないだろうか?

 

 酵母を全く殺さずに活性にすると、壮大に吹きこぼれてしまうし、瓶の内圧が高くなりすぎると危険でもある。何らかの吹きこぼれ防止策は必要だろう。

 ただ、考えられる手段(もろみの添加量減らすとか、発酵させ切ったもろみを活性にごりにするとか)をとった場合、酒そのものが変わってしまうと思われるので、今ここにある酒の苦味をなくすにはどうしたらよいかがわからない。甘みを増してマスキングするのもアレだし……

 ビールだってかなり苦みがあるけど飲みやすいわけだから、同じ炭酸系の酒として、苦味はキレだと考えることはできないか、とも考えたけど、苦味の質が違う。この酒の苦味は後からやってきて持続力の長い苦味だから、ビールと同列に考えることはできなさそうだ。

 かなり厄介な問題だと思うんだけど、これって何か良い解決方法はあるのかな?