改良雄町を使った酒の仕込みが始まった。
まだ酒にはなっていないから、どうなるのかはわからないけれど、米を触っていて気になることがいくつか。
まず、米が非常に割れやすいという事。
米が割れないようにかなり気を使って乾燥したはずなのに、委託精米に出して帰ってきた米を見ると、胴割れしまくっていてがっかりした。限定吸水のときにもあからさまに割れが目立って悲しくなる。
もしかするとこれは精米の問題なのかもしれない。僕が勤めている蔵は現在、二社に委託精米を出しているが、一方の会社に出した方の米は例年と変わらない感じだったのに、もう一方の会社に出した雄町を含む米は、例年とは比べ物にならないくらい割れかたがひどい。
最近は委託精米の量が増えて、精米工場がいっぱいいっぱいになっているとかいう話もあるし、急いで仕上げようとしてこんな感じになっちゃったのかな? という気もする。
もう一つは、米がなんだか柔らかい気がするということ。割れが多いから当然サバケも悪いのだけど、それだけではなくて米自体が柔らかい気がする。
食べてみても、さすがにコシヒカリほどではないけれど、すこしもちっとした感じがある。
近所の産直市の食味計で改良雄町を測定してみると、アミロース値が16.2%と酒米としてはけっこう低い。
食味計の精度には疑問があり、特にアミロース値に関しては(参考値)という但し書きがあるので、鵜呑みにはできないと思うが、感覚的には実際去年の米よりアミロースが低いのかな? と思う。
昔読んだ教科書には、登熟期間中の気温が高いほどアミロース値は低くなる(アミロペクチンが多くなる)と書いてあった。
アミロペクチンはアミロースよりも糖化酵素の影響を受けやすいが、高温登熟の場合アミロペクチン側鎖が長くなって糖化酵素の影響を受けにくくなる。登熟期の気温が高いほど米の消化性は悪くなる、と言われているので、アミロース値よりもアミロペクチン側鎖の長さの方が、消化性に与える影響は大きいのだと思う。
今年の改良雄町の場合、特に登熟初期の気温が高かったので、もしかするとその辺の影響はあるのかもしれない。
直観的には、もちもちしていて米が柔らかいという事は、すなわち消化性が良い、と考えたくなるけど、サバケが悪いけど実際の消化性は良くない、となる可能性もある・・・・・・が、割れが多いので、その分米の表面積が大きくなって酵素作用を受けやすく、結果よく溶ける、という事も十分考えられる。様々な要因が絡み合ってくるので、酒造りは難しい。
アミロペクチン側鎖の長さと、アミロース値の高低に相関があるのであれば、アミロース値を調べることで、簡易的にその年できた米の消化性の良し悪しを判別できるのではないか、などと考えてみたりするけれど、その辺はどうなんだろう?