孤独の発明

主に米作りとか酒造りについて

変わり穂

 改良雄町の田んぼで草取りをしていたときに、変わり穂を見つけた。変わり穂とは、突然変異や自然交配、混種などによって、田んぼに植え付けた品種とは異なる性質を示す穂のことである。
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別々の田んぼで二株見つけたが、どちらもよく似ている。一番下に置いた改良雄町と比べても頭一つ高く、熟れかたが遅い。籾は見た感じまあまあ良さげだが、やたらとノゲが多く長い。

 稲の姿かたちから見ると、改良雄町の親である比婆雄町の性質が強く出たものだろうか。所謂、先祖帰りというやつ。比婆雄町のデータは探しても見つからなかったから、本当に似ているのかどうかはわからないが。
 とりあえず、試験栽培を行った「雄町1号」とは熟期も見た目もずいぶん違う。
 この熟れ具合だと、最後まで登熟しきるかどうか怪しいし、これほど長く弱い茎だと栽培は困難だろう。実用的な意味はないけれど、こういうものは、見ているだけでなんだか嬉しくなってくるので、株を抜き取って植え直し、種取りして、来年はバケツ稲なんかで育ててみようかな、などと思う。

 明治以前の品種改良は、栽培農家自身が変わり穂を見つけて、分離し種を増やす、というやり方が主だった。
 そういう育種方法を取る場合、何よりも見た目のインパクトは優先されると思う。似たような顔つきの稲がズラリ並んでいると、何か特徴がなければ判別できないから。
 米のうまい不味いは見てもわからんが、穂が長い、粒が大きい、背が高いというのは分かりやすい。
 今回見つけたようなあからさまに弱点の見える変わり穂は、普通無視されるものだけど、じゃあどういう性質の稲ならばピックアップする価値があるだろうか? 
 そんなことを考えて、稲穂を観察しながら田んぼに入ると、クソしんどい田んぼの草取りとかが、少しは楽しく思えてくるような気もする。ていうか、そういう楽しみでも見つけなければ、草取りなんてとてもやっていられない。暑いしかゆいし歩きにくいしつらい。